会長挨拶 - 第10代会長 町田 睿(昭31卒)

写真: 町田 睿

この度、計らずも名門秋田高校同窓会長の大任をお引き受けすることとなり、責任の重さを実感いたしております。
以下所感の一端を申し述べ、覚悟の証といたしたいと存じます。

昨年、本校は創立140周年を祝ったばかりでありますが、本校開校明治6年当時は、明治新政府が、新しい“国のかたち”を創ることに奔走していた時代でありました。欧米列強帝国主義の荒波がアジアに押し寄せ、それに抗して独立自尊を目指す、国作りのための人材育成が急がれていたと思われます。

司馬遼太郎は、新政府がやった仕事のなかで、もっとも力を入れたのは、教育であっただろうと「坂の上の雲」の出だしの辺りで書いております。

本校は、全国の中でも、中学校の創設が最も早かったグループであったとのことであります。以来140年の星霜の中で本校を卒業して各界で活躍した逸材は、枚挙に遑がありません。130周年の記念事業で小玉得太郎先輩が中心となり編纂された「先蹤録」に採択された43名の大先輩は、その一部であり、昭和・平成以降の逸材を採り上げる先蹤録の続編が待たれるところであります。

ところで、140年を経て迎える現在の日本は、明治維新や太平洋戦争後に劣らぬ、激動と困難の時代であります。時代を大きく変えた科学技術は、ICT即ち情報通信技術の革新であり、地球上のあらゆる出来事が瞬時に地球全体に伝わるグローバリゼーションの流れを生みだしました。地球が宇宙の中の小さな球体として、人類にかけがえのない環境であると認識されるにいたっています。

他方、ソ連邦崩壊後のアメリカ一極支配(ユニラテラリズム)も長くは続かず、BRICsといわれる新興国の抬頭、就中、中国の躍進が、世界経済のみならず国際政治において、大きな不安要素となっているのは、ご案内のとおりであります。

国際緊張の高まる中で、日本は追いつき追い越せを合言葉とした高度経済成長後の成熟のステージに入り、少子高齢化と人口減少が加速する暗い将来見通しの中で、改めてこれからの日本のかたちを模索している状況にあります。特に我が秋田県は少子化、高齢化、人口減少、いずれについても47都道府県中最速のスピードで進行しており、先般の元岩手県知事で総務大臣を務められた増田寛也氏のチームのシュミレーションによれば、今から四半世紀後の2040年は秋田県は25市町村中、大潟村を除いて全て消滅する見通しにある、と予言されております。

今、この厳しい状況の中で必要とされておりますのは、新しい価値を生み出す力、イノベーションであります。イノベーションはシュンペーターを持ち出すまでもなく、創造的破壊という、それまでの固定概念や既得権益の破壊から生まれるものでありますから、旧来の秩序を否定するところから始めなければなりません。

私は、グローバリゼーションもイノベーションも教育の果たす役割が極めて大きいと思います。その意味で、秋田には大きな希望があります。教育を大切にする風土があるということであります。児童の教育水準の高さやユニークな大学の存在など、人材育成の成果が大きく開花する期待を持ち得るからであります。

以上申し述べた環境認識を前提として、我が秋高同窓会は如何にあるべきかについて最後に触れてみたいと思います。

何よりもまず、郷土秋田、そして日本を再生しようとする高い志を持つ若人を育てるという使命を教職員と共有することであります。秋高生への物心両面での支援を継続し強化して参りたいと思います。特に優れた先輩を多く輩出している本校にあっては、諸先輩方との交流は最も効果的な教育の機会であると考えます。

又、同窓会は同窓の人々との親睦を深めることがその目的の一つでありますが、秋高の存立基盤である秋田が消滅してしまうリスクは看過出来ません。郷土秋田再生への積極的な関わりも大きな課題といたしたいと思います。

東京同窓会をはじめ各地の同窓会支部のご協力を頂きながら、郷土秋田支援の輪を拡げていくことも考えたい。

同窓会活動が、郷土秋田へのエールとなり、UIターン促進や交流人口の増大、秋田の地での起業促進、ふるさと納税支援など、卒業生同士の力を併せていくことなども、間接的ながら在校生支援につながるのではないかと愚考しております。

名門秋田高校が県内の知性の集結するところとするならば、在校生たちがこの大きな環境変化の本質を捉える知性を磨き、新しい時代を自ら率先して先頭に立つ勇気を蓄え、郷土を愛し日本を救う大きな力となって欲しいと念じております。私はそんなことを夢見て、秋高同窓会のさらなる発展の旗振役を果たしたいと念じております。ご支援、ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

平成26年 6月15日
第10代会長(昭31年卒)町田 睿