文武両道…若かりし日々 (5)

吹奏楽部

2014年09月01日更新

遠い思い出の中の秋高ブラバンと昨今

工藤 雄一 (昭和33卒)

 秋田中学のブラスバンド部は昭和7年に初めて誕生し、翌昭和8年9月2日秋田県記念館前での秋田中学校創立60周年記念式典において、校歌の演奏などで大いに活躍し、参列者や市民を感動させたと『秋高百年史』にある。部設立の目的は、その記念式典のためであったろうと推測される。この式典では、現在も歌い継がれている校友会歌(古村精一郎作詞、山田耕筰作曲)が発表され演奏されたと書かれている。

 また、秋高吹奏楽部OB会ホームページには、昭和9年の0Bたちの記念写真が載っている。彼らが部の立ち上げに直接関与したと推測されるが、こまかな資料はない。

 私は昭和30年4月秋高に入学して、新入生歓迎会でブラバンの演奏を聴いて感動し、即刻音楽室へ直行して入部した。当時の3年生は、小坂和男部長、松橋賢治指揮、大野恵通、近江満の4人で、2年生は、倉田隆一、小坂鎮雄、佐々木宏、島貫隆夫、白石和彦の5人、我々1年生は、京極敏、工藤雄一、佐々木貞吉、佐藤千代治、佐藤義明、佐藤久男、中泉俊堯、早坂光弘、渡部仁の諸氏であった。

 秋田高校ブラスバンド部の第1回定期演奏会は、昭和30年秋、秋田県立児童会館において開催された。もう資料も手許には残っていないが、行進曲は、「士官候補生」、「旧友」、「双頭の旗のもとに」等、ワルツ「ウィーンの森の物語」、序曲「バグダットの太守」を演奏したような気がする。第2回の定期は倉田先輩の指揮で、第3回の定期は佐々木君の指揮で行われたはずである。

 われわれが、第1回の定期演奏会をはじめてから3年経過し、私が卒業をした昭和33年、秋田県吹奏楽連盟が立ち上がったことになる。吹奏楽コンクール秋田県大会は、連盟ができた翌昭和34年第1回が行われている。それ以後の秋田高校吹奏楽部の参加状況は連盟のホームページを参照してほしい。

 私が秋田高校吹奏楽部の指導を頼まれたのは、昭和40年4月秋田高校の校長室で鈴木健次郎校長から直接であった。そこには音楽を担当していた佐々木竹治先生もおられた。学校長は「後輩たちのためにぜひ本校のブラスバンドの指導に一肌脱いで欲しい」と言われたのである。秋大を卒業しすぐ聖霊高校の物理の教師をして3年目のことであった。私がブラスバンド部の出身であるだけでなく、当時秋田市民交響楽団の常任指揮者もしていたためであった。

 私は、1年間という任期で練習曲にショスタコーヴィッチの交響曲第5番を選んだ。この時の生徒たちの中には、私が色々な場面で後に関わることになった面々がいた。3年には根田俊昭、大内千正、穴沢義久、2年には川口洋一郎、伊藤茂樹、1年には佐川聖二、長谷川悦雄君らである。1年後新しい音楽教師として私の1年後輩の伊藤吉雄君が秋田高校に赴任した。専任教師による吹奏楽部の指導はこのときから始まったのである。

 平成16年、伊藤茂樹君から吹奏楽部のOB会結成の連絡を受け、部の定期演奏会が第50回を迎えることを知った。現役の諸君の定期演奏会で、OBの楽団も立ち上げ演奏しようということになり何度かの練習を経て、ついにそれは実現した。


 シベリウス作曲 交響詩「フィンランディア」
指揮 工藤雄一 演奏 秋田高校吹奏楽部OB吹奏楽団
   平成16年5月23日 秋田県民会館ホール

 5月23日秋田県民会館は満員の盛況であった。ステージには、楽器を持って駆けつけた56名のOBと不足パートを補う現役を含めて総勢80名を越す秋高OB吹奏楽団が待機していた。壮観であった。アナウンスが入った。「OBによる第1曲目はシベリウス作曲の交響詩『フィンランディア』です。指揮は当部OBの工藤雄一さんです」私は、ステージ下手からさっそうと出ていった。すぐ、全員が立ち上がった。指揮台の横で観客にあいさつをし指揮台にのぼった。全員を座らせ落ち着いたところで、フィンランディアの1拍めを振り下ろしたのであった。

 私は今、失いかけた戦後のNHKラジオ歌謡約800曲の楽譜の収集と歌の復活を訴えて、平成14年から秋田市を拠点とし、県内はじめ全国各地(東京、横浜、埼玉、千葉、仙台、松本)の「ラジオ歌謡を歌う会」の指導や多くのラジオ歌謡講演会、東京ラジオ歌謡音楽祭や全国ラジオ歌謡音楽祭(秋田市)に指揮や歌唱で出演している。また、日本ラジオ歌謡研究会を組織して、研究誌「ラジオ歌謡研究」の責任編集者でもある。研究誌は国会図書館はじめ、全国すべての県立図書館、有名音大図書館に寄贈している。すべて、秋高ブラバンからの出発である。

工藤 雄一 (S33卒)

工藤 雄一くどう ゆういち さん (S33) プロフィール

元秋田市民交響楽団常任指揮者。秋大鉱山学部電気工学科卒。東大理学部研究生修、理学博士(東大)。秋高同窓会常任理事・前名簿委員長。元聖霊高教諭。現在、東大大学院理学系研究科客員研究員。日本ラジオ歌謡研究会会長。編著「思い出のラジオ歌謡選曲集1~3巻」(全音)。