国内外の学校間交流の進展 (3)

国内高校生派遣事業 ~ むすび

2014年09月01日更新

三 国内高校生派遣事業

 本県の国内高校生派遣事業として、本校生徒が京都市立堀川高校、大分県立上野丘高校、岐阜県立岐阜高校を訪問し、授業体験などを通して相互交流を行った。

 次の文章は、平成22年に五十嵐悠君(当時2年生)が岐阜高校を訪問した折のレポートである。

 私は11月9日から2日間岐阜県立岐阜高等学校で岐阜の生徒と一緒に授業を受けてきた。さまざまな刺激的な体験をでき、非常に良い2日間となった。

 その中で最も驚いたことは校舎だ。校舎は、昨年建て替えられたばかりだったので、もちろんきれいで、さまざまな設備が整っていて、特に図書館はスペースが広く本の数も非常に多く、とても充実していた。全体的に広くて、また明るい 開放感のある校舎だった。

 また、校舎以外の点では、学習などの学校生活に対する姿勢に非常に驚いた。岐阜高校の生徒の姿勢は、非常に積極的ですばらしかった。ただ単に先生から教えられたことをそのまま受け入れるのではなく、それを咀嚼して疑問を持ち、議論していこうとするのが良いところだった。

 また、生徒の向上心の高さがすばらしい。初日に学校内を授業を受けるクラスの委員長から案内していただいたのだが、その時に私が「岐阜高校ではやっぱり名大をターゲットとしてるの?」と聞いたら、「うちでは、東大、京大に行けるようにどんどんやってくよ」と答えられて驚いた。先程の授業への姿勢もそうだが、授業に向けてしっかり予習し、授業で集中し、……そういった向上心のサイクルが岐阜高校の進学実績といった数値に結びついていくのだと思う。実際、岐阜高校での授業で生徒が「分からない」と発言することはまずなかった。これほどまでの予習をすることは、大変であろうが、彼等の向上心がこれを支えているのだ。

 学習面以外でもいいところはあった。

 岐阜高校には、学校のある種の目標として「トータル・パーソン」という考えがある。これは、「知性と精神性を高い次元で統合した人間」である。まさしく、その「トータル・パーソン」を育て上げるものがたくさんある。修学旅行や球技大会、文化祭だけでなく、乗馬して登山するなどの活動がある林間学舎、班ごとに決めた訪問先ヘアポイントメントをとってフィールドワークなどを行い進路について考える FPT(Future Planning Time)など生徒の精神性を育て上げるような学校行事などがたくさんあった。

 特にFPTのフィールドワークの発表会があったのだが、名古屋大学大学院の航空宇宙の研究室や航空自衛隊岐阜基地など、さまざまな場所での経験を大変分かりやすく伝えていた。その他にも朝のHR終了後の10分間の朝読書などの「トータル・パーソン」を目指すさまざまなものがあった。

 最後に私自身今まで体験したことのないさまざまなことを体験でき、非常に貴重ですばらしい体験をできた。この体験は、一生忘れることのないものとなると思う。今回、このような体験をでき、本当に有り難かった。

 次は、同じく平成22年に上野丘高校を訪問した脇坂安晃君の報告である。

 11月20日~23日の大分研修で、「自分の高校以外の学校で授業を受ける」という、これまでの人生で初めての経験ができました。2日間の貴重な経験を元に、大分上野丘高校と秋田高校の相違点を比較し、これからの自身の学校生活に新しく取り入れるべき点や、改善しなければいけない点を考えてみました。

 私が感じた秋田高校と上野丘高校との大きく異なる点は、次の四つです。

 一つ目は「1日の時限数」の点です。秋田高校は基本的に8時45分から1時間目が始まり、毎時間55分の1日6時間授業なのですが、上野丘高校は7時45分から「0」時間目といわれるプリント学習が毎日あり、その後に50分が7時間、つまり1日は8時間授業でした。上野丘高校の「0」時間目は、秋田高校では朝学習です。上野丘高校は生徒の自主参加ではなく、先生がプリントを配り、生徒に解かせてからそれぞれの教科担当の先生が解説をするというものでした。秋高にも朝学習はあるのですが、私たち生徒が自主的に行い先生は全く介入していないので、上野丘高校との違いに戸惑いを感じました。

 二つ目は「ノーチャイム制」を取り入れていた点です。驚かされたのは、授業開始2分前にはクラス全員が着席していて、次の授業の準備をして待っていたことです。この光景を見た時は、やはり上野丘高校はレベルが高く、九州トップクラスの進学校に来たのだなと感じました。そして、全校生徒が学習に対して意識を高く持っているからこそできることであろうと思いました。また、これほどの意識の高さは秋田高校にはあるのだろうか? と自分に疑問を投げかけてしまいました。我が校は「自主自律」の精神を重んじていますが、なぜかチャイム制は継続されています。ノーチャイム制は上野丘高校ほどの意識の高さがないと、悪い方へと転がってしまう可能性が高いので、今の秋田高校の様子だとそのようにするのは多少難しいのかなと思いました。

 三つ目は「授業の進度」の点です。私は、上野丘高校の授業の特徴は「ゆっくりていねいに」と感じました。内容の難易度は秋田高校と変わりがありませんでした。決定的に異なっていたのは授業進度です。例えば化学Iでは、秋田高校では有機化学が終わりかけているのに、上野丘高校はまだ無機化学の途中でした。しかしながら、これが意味するのは難しい内容を多くの生徒が正しく理解できるように、ていねいに教えているということだと思います。秋田高校は進度が早い分、それだけ内容の理解に苦しんでいる生徒も多いのでしょう。しかし、進度の速度はメリット、デメリットがあると思うので、一概にどちらがいいとは言い切れない、と思いました。

 四つ目は「生徒の自主性があまり重んじられていない」という点です。上野丘高校の校風は、良く言えば模範的、悪く言えば束縛的です。その典型的な例が課題の多さや朝学習=0時間目です。数学の課題は毎日あり、多くの教科でワークの提出もありました。多くの高校同様、整容検査もありました。秋田高校には整容検査なるものは全くないので、このことも多少驚きがありました。

 以上のことを踏まえて、私の高校で改善すべき点や上野丘高校から見習うべき点をまとめたいと思います。

 我が校の改善すべき点は、自主自律の精神の意味をしっかりと捉えて、秋高生としてのあるべき姿勢を常に考えることです。校風の”自由”の正しい意味が何かを考え、”自由”の定義を間違えてはいけない、と思いました。この校訓の意味を私自身もはき違えていたのかもしれません。この研修で「自分自身の正しいあり方を残りの高校生活で常に考えて過ごしていかなければいけない」と感じることができました。4日間の研修でたくさん学んだことや感じたことを、私自身と秋田高校にプラスになるよう、残り1年半の学校生活に生かしていきたいと思います。

むすび

 以上、生徒のレポートからも分かるように、韓国・ソウルや国内の高校を訪問した生徒にとっては、いずれも貴重な体験となっている。こうした新たな交流は、とかく「井の中の蛙」になりがちな秋高生に、より広い視野から物事を見つめる目を養わせる。それは一方で、自己を相対化させ、日本や秋田、秋高のよさを再発見することにもつながっている。

 今後、さらに新たな交流を推進し、異文化理解を深め、国際感覚を磨くことで、国内の枠にとらわれずグローバルな視野から国際的な舞台で活躍できる秋高生が輩出するよう期待したい。

年度 本校への動き       本校生徒の動き  
  学校訪問 学校訪問(生徒) 留学受入 出前講座 留学者 国内生徒体験訪問
H15            
H16 能代高校     国際教養大学英語授業    
  盛岡第三高校          
  盛岡第一高校          
  五所川原高校          
  松本深志高校          
H17         川辺智子さん  
H18   中国ホームステイ受入 ベネディクト ドイツ      
H19   フィンランド学生来校 唐孟瑩 中国      
H20 長野県伊那北高校   金彩媛 韓国 東京学芸大学附属高校授業 佐藤かりんさん 堀川高校11/18~11/21
  福島県白河高校     東京大学化学講義    
  長崎東高校     東北大学    
  西仙北高校          
  札幌東高校          
H21 和歌山県橋本高校 堀川高校11/16~11/19 金彩媛 韓国 東北大学   堀川高校11/9~11/13
  古佐田高校 国際教養大学留学生3回       上野丘高校11/10~11/13
  盛岡第一高校PTA役員 八郎潟中学校        
  湯沢高校 韓国ホームステイ受入        
  秋田北高校          
  福島高校          
  米沢興譲館高校          
  韮山高校          
  三重県立宮川高校          
H22 浦和高校 国際教養大学留学生3回 留学生6/14,15 東北大学 ジョーンズ・リツキー・フアーモン君 堀川高校11/16~11/19
  山形県新庄北高校 堀川商校11/24~11/26       上野丘高校11/16~11/19
  守山高校 外旭川中学校        
  長崎西高校          
  白石高校          
  宮城第一高校          
  土浦一高校          
  青森南高校          
  盛岡第一高校          
  福岡県伝習館高校          
  八戸北高校          
  青森南高校          
  小樽潮陵高校          
H23 青森高校 ソウル高校ホームステイ受入   東北大学   理数科韓国フィールドワーク
  宮城県佐沼高校 城南中学校生徒       岐阜高校11/8~11/11
  仙台二華高校 外旭川中学校生徒       上野丘高校11/20~11/23
            海外派遣事業ソウル
H24 盛岡第三高校 秋田東中学校生徒   東北大学   理数科韓国フィールドワーク
  鶴岡南高校 ソウル高校ホームステイ受入       海外派遣事業ソウル
  秋田南高校2回          
  大宮高校          
  高松高校          
  室蘭栄高校