奈良「学び」の旅

- 古稀の戯れに -

(著)
加藤 征夫 (S36)

内容

発行所
法隆寺金堂壁画模写

はじめに

 平成22年(2010)は、710年に藤原京から平城京に都が移って1300年という節目の年であった。奈良は「平城遷都1300年」をキャッチフレーズに、記念行事で賑わっていた。
 この年が奇しくも、我が奈良「学び」の旅のスタートとなったのは、旧知のN君の賀状である。早稲田大学の通信教育を受けるとあり、これに少しく触発されたことは否めない。

 少し遡ってその数年前であったろうか-。紙上で奈良大学 通信教育部の存在を知り、入学案内などの資料を取り寄せていた。その後懸案であった加藤病院の改築工事も完了した解放感が、この旅を後押ししてくれたのである。

 3年次編入の、平成22年度「4月生」として通信教育部生となったが、この3月、どうにか卒業にこぎつけた。この間の東日本大震災は奈良滞在中のことで、津波による被災地の惨状をリアルタイムで、テレビ画面を通してみることになった。驚愕したとしかいえない。

 奈良旅は続くが、「学び」あるいは「癒し」のつもりが、少しずつ苦痛を感ずるようになった。大震災による身近な人々の苦悩も知るが、また学業を続けていく中で、1年ともいえぬ時間が記憶力の低下を痛感するのである。卒業にはとくに拘泥しないとしたものの、科目修得試験には随分苦労したから、その達成感は卒業式で味わうことになる。

 その後、この数年間の常態化していた奈良旅という時間を失うことになる。無為に過ごすことは、神経細胞の脱落を促進するなどと周りから脅されると、次の目標設定までに、今回の「旅」を少しまとめてみようと考えてみたものである。力量からしても当然だが、決して学問的なものではなく、旅の体験記・印象記の域を出ないであろう。

 古稀を迎えての「Dasein」、名刺のかわりにでもなれば幸いである。