進路指導10年の軌跡 (2)

平成19年度入試 ~ 平成21年度入試

2014年09月01日更新

四 平成19年度入試

・センター試験難化と前期集中

 センター試験の出願者は4年ぶりに増加した。しかし、7科目総合(900点満点)の平均点は文系で前年比マイナス39・2点、理系はマイナス42・5点と大幅に下降した。また、国公立大学では後期日程の廃止・縮小による前期集中が進み、受験機会が実質1回となった。これらの影響により、国公立大学の受験者数は約3%減少し、全募集人員に対する倍率は4・8倍と初めて5倍を割り込み過去最低を記録した。

・秋高では国公立大出願者増加

 全国の動向をみると、国公立大学志願者が減少する一方で、景気回復や就職状況の好転を背景に私立大学志願者が増加した。ところが、本校に限定してみると、国公立大学の出願者が延べ369人で前年比9人増だったのに対し、私立大学出願者は延べ423人で前年比124入減と大幅に減少した。減少理由としては、私大が全体的に易化していることで受験校を絞り込んだ生徒が多かったことなどが考えられる。特に減少幅が大きいのは、明治大40(-27)、青山学院大30(-15)、東京理科大13(-12)、立教大30(-10)などであった。

北海道大学

年度によって出願者数は変動しているが、平均すると23.2人が出願している。東北大からの志望変更も多いが、「何が何でも北大」という生徒も毎年存在する。しかし、平均合格者数は8.8人で、容易に合格することはできない大学のひとつである。

東北大学

平均すると、87.8人が出願している。2003年から2009年までは平均で67.6人の出願だが、2010年以降は4年連続で110人以上が出願している。合格者は2009年にようやく30人の壁を突破し、2010年には50人まで増えたが、近年は下降線をたどっている。

東京大学

10年をとおしてみると、しだいに出願者が増えてきている。だが、残念ながら出願者数の増加が必ずしも合格者数の増加につながっていない。ここ数年の東大入試では、私立の中高一貫校が公立校を圧倒しているが、地方公立校の意地を見せたいところである。

千葉大学十横浜国立大学

この両校は秋高生の首都圏志向の象徴的な存在である。東北大の出願者数が100人を超えるようになって出願者が急減したが、東北大から志望変更する生徒は毎年数人いる。ただし、不況による国公立大人気もあって、両校とも合格するのは決して容易ではない。

・指定校推薦に19人

 本校の私大出願者減少の一因として、指定校推薦での合格者の多さもあげられる。私大のAO・推薦入試での合格者は24人いたが、このうち指定校推薦は19人を占めた。この人数は異例の多さである。なお、19人中8人が早稲田大であった。

・文系苦戦・理系健闘

 本校の大学別出願状況をみると、出願者が増えたのは東北大68(+21)、東京大25(+9)、横浜国立大15(+7)、北大27(+6)、お茶の水女子大8(+5)などである。一方、減少した大学としては秋田大48(-16))、金沢大0(-7)、埼玉大7(-6)などがある。

 合格状況では、東北大26(+5)で合格者が増え、前年合格者のいなかった東工大に2人の合格者を出したが、前年8人が合格した東大は3人の合格にとどまった。全体として理系の合格状況は前年並みであったが、文系は非常に苦戦し東大・京大・一橋大、さらに東京外国語大も受験者全員が不合格であった。

 医学部医学科の合格者は前年比6人増の16人(国公立14十私立2)と健闘した。東北大に3年ぶりの現役合格者が出たほか、推薦・AOではなく一般入試での国公立大学合格者も出た。
 

五 平成20年度入試

・難関大志向

 新規高校卒業者数は前年より約5万5千人も減少した。しかし、センター試験の出願者数は約1万人の減少にとどまり、国公立大学の出願者数は前年比99・8%であった。出願者数の減少幅が小さかった要因の一つは大学志願率の上昇である。特に女子の4年制大学志向の強まりが志願率を押し上げている。その他の要因としては、センター試験の平均点上昇がある。前年に大幅に下がった平均点が文系・理系ともに上昇し、強気の出願が増えた。特に旧帝大を中心とした難関大学での出願者の増加が目立つ。

・後期縮小と医学科定員増

 国公立大学では、旧帝大・医学部医学科で後期日程を廃止・縮小する動きが加速した。例えば、名古屋大では後期が全廃され、東大では後期が「理科三類を除く全科類」となり、募集人員は前年までの約3分の1に縮小された。文理共通の総合問題で実施された東大後期は予想どおりの激戦となり、センター試験9割超の得点がなければ第一段階選抜を通過できなかった。

 深刻化する医師不足対策として、医学部医学科の定員増が実施された。この結果、国公立大学医学科の定員は全国で153人増加し、秋田大でも定員が10人増えることとなった。

・東北大受験者増加 

 本校の大学別出願者数をみると、東北大の増加が顕著である。前期・後期・AOの合計は92人で前年より24人も増えた。特に増えたのは工学部で、42人(+27)と激増した。このほか、秋田大も48人(+25)と大幅に増えた。こちらは医学部医学科が39人(+22)に増えたことによる。一方、出願者が減ったのは東大(-9)、北大(-8)などであった。

 合格状況では、東北大は出願者は大幅に増えたが合格者は伸びず、24人(-2)にとどまった。また、国公立の医学科も出願者は増えたが合格者は9人(-5)止まりであった。全体的に苦戦するなかで、前年合格者がいなかった一橋大に3人、出願者が前年から9人減った東大に5人(+2)が合格した。

・私大合格者増加

 本校の私大合格者(延べ人数)は前年より14人増えた。これは生徒の努力の成果でもあるが、一部難関大を除く私大全体の急激な易化の影響でもある。中央大・明治大あたりも易化しており、本校の中央大合格者は前年より9人増えた。一方で早慶の難度は変化していない。そのなかで早稲田大に14人(+2)、慶應義塾大に5人(+1)が合格した。

・如月講座

 この年度に関して特筆すべきことは、「如月講座」の開始である。これは、センター試験直後から2月にかけて開設される3年生対象の特別講座で、主に国公立大学の2次試験対策を目的とする。従来の講座との大きな相違点は「原則全員参加」とし、如月講座という名称をつけたことである。3年生にとって2月は自宅学習期間だが、この講座は生徒にも好評であった。「毎日の生活リズムが身につき役立った」「実力アップばかりでなく精神的な支えにもなった」などの感想が寄せられている。

・全国学力テストの衝撃

 平成19年4月に小・中学校で全国学力テストが実施された。結果が文部科学省から公表されたのは、秋田わか杉国体閉幕から約2週間後の同年10月末であった。このテストで秋田県は小・中学校ともに全国トップレベルの成績を示し、全国から注目されたのである。そして、平成20年度入試が本番を迎えたころ、「秋田は小・中はレベルが高いのに大学受験で結果が出せないのはなぜ?」「秋田の高校は何をやっているんだ?」という声が県内外から聞こえてくるようになった。全国学力テストにおける秋田県の好成績は本校を大きく変えようとしていた。

六 平成21年度入試

・新たな取り組み

 新たな取り組みとしては、第一に管理職・3年部主任・進路指導主事による3年生全員との個人面談があげられる。朝7時ころから始められた面談では学習や進路に関する助言のほか、要望の聞き取りが行われた。図書館の開館時間延長(閉館18時→19時半)はこの面談での要望を実現させたものである。

 第二は、職員相互の授業参観である。「知的好奇心を喚起する授業」「教師・生徒の双方向性を持った授業」「思考力を高める授業」を実践するため、教科に関わりなくお互いに授業を参観するようになった。生徒の反応もおおむね好意的で、「後方から見られているので緊張感を持って授業に臨むようになった」という感想が多かった。

・センター試験の難化

 センター試験の志願者は前年から約600人増えたが、平均点はほとんどの科目で前年を下回る結果となった。特に下降幅が大きいのは英語のマイナス10・24点である。7科目総合の平均点は文系でマイナス19点、理系でマイナス20点といずれも下がった。

・つづく難関大志向

 センター試験の平均点ダウンを受けて、国公立大学全体の志願者は前年比97・4%と減少した。しかし、旧帝大を中心とした難関国立大学の志願者は前年比99・1%と微減に止まった。受験生の難関大志向が続いていることがわかる。前年志願者が増えた東大は、前期(-2・O%)、後期(-9・2%)ともに志願者を減らした。一見すると、ここ数年の「東大人気」がかげってきた印象を受ける数値だが、前期は過去10年間では前年に次ぐ志願者の多さであった。

 本校の大学別出願者数をみると、北大29(+13)、新潟大29(+11)、東工大(+6)、東大20(+4)などで数が増えた。一方、減少幅が大きいのは、東北大69(-28)、秋田大57(-16)、千葉大13(-8)などであった。

・東北大合格者増加

 本校の東北大・秋田大の出願者は大幅に減少したが、どちらの大学も合格者は増えている。東北大は前年比10人増の34人で、これは平成3年の35人に次ぐ合格者数の多さとなった。秋田大は全体では前年より3人多い30人だが、医学部医学科に限定してみると前年比6人増の13人とほぼ倍増した。

 東北大の合格者が増えた最大の要因としては、AO入試への積極的な挑戦があげられる。AOⅡ期(センター試験なし)には4学部計で15人が受験して8人が、AOⅢ期(センター試験あり)には3学部計8人が受験して5人が合格した。

 なお、東北大は最終的に過卒生も12人合格しており、現役と過卒を合わせての合格者は46人となった。これも平成3年の48人に次ぐ好結果であった。

・36年ぶりの東大理三

 東大の出願者は前年より4人増えたが、合格者は前年と同じ5人だった。しかし、このなかには最難関とされる理科三類・文科一類の合格者が1人ずついる。また、過卒の合格者2人のうち1人が理科三類だったので、結果的に本校から計2人が理科三類への合格を果たした。なお、本校からの理科三類への現役合格は36年ぶりであった。

・私大進学者の減少

 私立大学の全国的な志願状況をみると、総志願者数は前年並みだったが、近年増加を続けていた難関私大の志願者数が減少に転じている。早稲田大は前年から約4千人、慶應義塾大は約3400人が減少した。特に減少が顕著なのはボーダーライン以下の成績層である。これは、挑戦を控えて確実に合格を狙った受験生が増えたためと考えられる。平成20年9月のリーマン・ショック以降の景気後退の影響もあるのだろう。

 本校の私大出願状況は全国の動向とは異なり、早稲田大(+4)、慶應義塾大(+8)、上智大(+3)など、むしろ難関私大への挑戦が増えている。目立った変化としては、青山学院大の激増(+23)、中央大の激減(-35)などがあげられる。また、私大の総出願者数は前年の549人から574人に増えていながら合格者が減少(180→174)し、進学者も減少(67→56)している。