進路指導10年の軌跡 (1)

平成16年度入試 ~ 平成18年度入試

2014年09月01日更新

はじめに

 ここではこの10年の全国および本校の概況を年度ごとに振り返ってみる。詳細な数値(合格者数・平均点等)は以降の資料に掲載している。なお、入試における「平成○年度入試」とは、平成○年度4月の入学者を選抜する入試であり、一般的な年度とは異なる。また、( )内の数字は前年比の増減を示す。

一 平成16年度入試

・5教科7科目

 センター試験が大きく変わった。国公立大学の多くが5教科7科目を課すことになり、時間割も変更された。また、短期大学の利用も始まったが、志願者数は過去最多を記録した前年から1万5537人も減少した。これは新規高校卒業者数が前年より4万6322人減ったことに起因する。国公立大学全体の志願倍率も前年の5・6倍から5・3倍へと低下した。

・センターの易化

 センター試験は全体的に易化し、平均点はほとんどの科目で前年を上回った。特に上昇幅が大きいのは国語(+13・07点)と数学IA(+9・00点)である。易化した科目が多いなか、数学ⅡB・日本史B・化学IBの3科目が難化した。

・強気の出願

 センターの平均点上昇を背景に全国的に国公立大学では強気の出願が見られた。高校卒業者数の減少により全体的な志願倍率は低下したが、東北大の志願者は増加した。東大(前期)は募集人員削減で志願者数こそ減らしたものの、志願倍率は前年3・1倍から3・3倍に上昇した。受験生の強気が垣間見える。

・難関大への挑戦

 本校の大学別出願者数(前・後期計)をみると、東大22(+15)、東北大94(+14)の増加が顕著である。このほかでは北大40、千葉大47も多い。特に干葉大は秋高生の首都圏志向の象徴的存在となっている。

 実際に合格者が増えた大学としては、北大15(+11)、東北大27(+8)、筑波大7(+5)、千葉大11(+3)などがあげられる。特筆すべきは東北大医学部医学科に2名が合格したことであろう。全体として難関大への挑戦・合格が多かったが、結果的に二次力の差が合否を分けた。上位者は実力を存分に発揮できたのに対し、中位層はやや伸び悩んだ印象を受ける。

・私大の志願者減少

 3年連続で増加を続けていた私立大学の志願者が減少に転じた。早稲田大は学部・学科の新設があったにも関わらず、全体として約8300人も志願者を減らした。その主な要因は高校卒業者数の減少だが、現役生に比べて併願校の多い既卒生の減少やセンター試験の平均点上昇が、私立大学の併願校数の絞り込みにつながったと考えられる。

 本校の私立大学合格者数(延べ人数)も、前年より10人少ない162人となった。そのなかで合格者が多かった大学は、中央大22(+9)、早稲田大16(±0)、慶應義塾大11(+4)、法政大10(+3)、明治大8(-1)などであった。

二 平成17年度入試

・理系好調

 7科目を課す大学がさらに増えたセンター試験の平均点は、前年に引き続いて上昇した。目立った難化は英語(-13・93点)、生物IB(‐11・09点)の2科目にとどまったため、概して理系の得点は高くなった。一方、英語を得点源とする受験生や生物選択者が多い文系では、得点が伸び悩んだ。

 本校のセンター試験結果(自己採点)は良好で、7科目総合(900点満点)の平均点で理系は東北地区1位となり、文系も3位と健闘した。大学合格者数(延べ人数)は国公立193(+22)、私立219(+53)で、いずれも前年を大きく上回った。合格率も前年を9ポイント上回る74・9%であった。

・東北大・北大の合格者減少

 合格者数等で好結果を残した本校であったが、東北大(-7)と北大(‐11)の合格者は大きく減った。数字的には、前年の増加分がそのままなくなった形である。最大の要因は受験者の減少で、特に東北大文系の減少が顕著である。文系4学部の受験者は、15年度と16年度はいずれも26名いたが、17年度は13名と半減した。17年度の進路資料『北雄』は、秋高生が東北大文系学部を敬遠する理由を、2次試験に数学が課されているから、と分析している。この背景には、当時の本校では3年文系で数学が選択科目であったことがある。

・安全志向

 東北大・北大の受験者減少の要因の一つには、次年度からの新課程入試とセンター試験へのリスニング導入に対する不安もあげられる。センター自己採点後の三者面談希望者が例年より多かったことは、受験生と保護者の不安感の強さのあらわれであろう。国公立後期では、A・B判定の大学に手堅く出願する生徒が多く、なかには前期で受けた学科とはまったく関連のない学科の受験者も見られた。合格者数は増えたが、「入りたい大学」よりも「入れる大学」を選ぶ傾向が強く、生徒の第一志望合格を願う立場からは手放しでは喜べない結果でもあった。

・私大専願者の苦戦

 本校の難関私大の出願者数および合格者数は例年並みであったが、国公立との併願者の方が私大専願者よりも好結果を残した。私大専願にすると負担が減って楽になるような錯覚に陥りやすいが、多くの秋高生が入りたいと考えるような有名大学は、決して楽に合格させてはもらえない。私大の二極化が進むなか、私大専願者にとっての最大の敵は、気の緩みなのかもしれない。

三 平成18年度入試

・新課程初年度

 本校では、1学級減(1学年8学級)となった生徒が初めて迎えた入試であった。新課程初年度であったことに加え、センター試験英語でのリスニング導入、薬学部の6年制化など、変動要素が多い年度であった。過卒生はもちろん、現役生にとっても、不安を感じながらの受験だったと思われる。

 センター試験はこれまでにも新課程初年度には易化しており、かねてから平均点上昇が予想されていたが、やはり今回も例外ではなかった。平均点は初導入のリスニングが36・25点と高くなったほか、英語(+11・34点)、物理(+13・45点)、生物(+18・02点)などで大幅な上昇が見られた。本校全体の7科目総合の平均点は前年から40点も上昇し、文系・理系ともに東北地区3位の成績であった。また、9割以上の得点者は24人と前年(10人)から大幅に増え、7割以下が30人だけという特異な結果ともなった。

・強気の出願

 国公立大学志願者が3年連続で減少し、志願倍率(5・00倍)はセンター試験開始以降最低となった。しかし、センター試験志願者の減少率が約3%であったことを考えると、受験生が国公立大学出願に積極的だったといえる。また、難関大の志願者は前年比103・5%と増えており、強気の出願をした受験生が多かった。特に、東大・東工大・一橋大など首都圏の国立大学の志願者増加が顕著である。なかでも東大は、テレビドラマの題材になったことに加え、大学による積極的な説明会開催などにより、志願者を前年比104・7%と増やした。

 全国の志願状況を学部別にみると、文系では法・政治学系、経済・経営・商学系が難関大を中心に人気であった。理系では医学部医学科が前年比105・7%と志願者を増やしており、ここにも受験生の強気が感じられる。一方、6年制となる薬学部は前年比93・1%と志願者を減らした。

・東大現役8人

 本校の大学別出願状況をみると、例年どおり首都圏志向の強さがうかがえる。出願者が増えたのは北大21(+9)のほか、千葉大28(+6)、東京学芸大17(+6)、東大16(+2)、筑波大15(+5)、首都大東京11(+6)などである。一方、東北大47(-14)、京都大3(-8)、東工大3(-7)、新潟大14(-17)などは減少が目立った。

 合格状況では、北大13(+9)、筑波大7(+3)、埼玉大9(+3)、千葉大11(+3)などで合格者が増えた。特筆すべきは東大8(+2)である。現役のみでは昭和49年の9人に次ぐ好結果であった。合格者はいずれも入学当初から一貫して東大を目指してきた生徒たちである。早期に過去問に触れて大学が求めるレベルを知り、長期にわたって対策を練ったことが合格を引き寄せたといえる。

 また、北大志望者が有志で定期的に勉強会を開き、同じ目標を持つ者同士が集団となって力をつけたことも注目に値する。この勉強会参加者の全員が北大合格を果たした。高いレベルで競い合える仲間がたくさんいるのは秋高ならではの学習環境であろう。

・私大の二極化

 私立大学の志願者は前年比98・1%となり、3年連続で減少した。そのなかで、センター試験方式の志願者は大幅に増えている。これは、センター試験の易化にともない高得点を利用しての積極的な出願が多かったためである。学部別では薬学部が6年制化の影響で前年比69・1%と激減したのが目立つ。

 本校の私大志願者はほぼ前年並み(延べ547人)であったが、学級減を考慮すると1人当たりの志願率は増加している。特に増えたのは中堅私大で、合格者も増えている。一方、早慶などの難関私大は、志願者は前年並みながら合格者は減少した。私大の二極化が確実に進んでいることがうかがえる結果となった。